……ううん…😌なんでもないや
ショートストーリー
クミの眠れない夜
『……ううん…😌なんでもないや』
夜中、クミは目を覚ました。枕元の時計は11時過ぎを指している。普段ならぐっすり眠っている時間なのに、今日はどうしても寝つけない。心の中に小さな棘のようなものが引っかかって、どうしようもなく苦しい。ため息をひとつついて、クミは静かに布団を抜け出した。
リビングの電気がまだついている。そこにはお母さんがソファに座って、何か雑誌を読んでいた。クミは少し戸惑ったけれど、そっと足音を立てて近づく。お母さんはクミに気づいて、優しい笑顔を向けた。
「どうしたの? 眠れないの?」
その言葉にクミは、かすかに首を縦に振るだけだった。何かを言いたいのに、言葉が出てこない。心に引っかかっていることは、学校でのこと。友達の輪の中で、なぜか最近うまくいかない気がする。言葉をかけても上手く返せなかったり、自分だけ取り残されているような気がして、今日もずっとモヤモヤしていた。だけど、こんなこと、お母さんに言ったら「気にしすぎだよ」と笑われそうで――。
「おいで」
お母さんが手招きをして、ソファの隣にクミを座らせた。何も聞かずに、クミの髪を静かに撫でる。カーテンの隙間から月明かりが差し込んで、お母さんの優しい手がキラキラと光って見えた。クミはその手に甘えるように頭を寄せる。
「……ううん…😌なんでもないや」
クミは笑顔を作って答えた。お母さんは何も言わなかった。ただ、クミの背中をゆっくりと撫で続けてくれる。温かくて、優しくて、まるで心の中に積もった雪をそっと溶かしてくれるみたいだった。
しばらくそうしていると、クミの目がだんだんと重くなっていく。お母さんの隣にいると、言葉にできない気持ちも、全部わかってもらえている気がする。
「……ねえママ、明日も一緒に朝ごはん食べようね」
クミがそう呟くと、お母さんは「もちろん」と笑った。その笑顔が嬉しくて、心が少しだけ軽くなった。
夜は静かで、リビングには母と娘の穏やかな時間だけが流れている。クミは少しの勇気と安心を胸に、再び眠りにつくために立ち上がる。
「おやすみ、クミ」
「……おやすみなさい」
小さな背中を見送るお母さんは、クミが何も言わなくても、きっとわかっている。大丈夫、ちゃんと見守っているから――。
クミの部屋の扉が静かに閉じ、夜はまた静けさを取り戻す。でも、クミの心の中には、温かな光がひとつ灯っていた。
プロフィール
名前:來未(くみ)
年齢:10歳(小学4年生)
性格:普段は明るく元気な女の子。周りのことをよく見ていて、人の気持ちに敏感。でもその分、少しだけ気にしすぎるところがある。自分の気持ちをうまく言葉にできず、つい「なんでもないや」と笑顔でごまかしてしまうことが多い。
好きなこと:
- 読書:物語の世界に入り込むのが好き。特に優しい登場人物が出てくる本を好んで読んでいる。
- お母さんとの時間:お母さんと一緒に過ごす時間が一番安心する。お母さんの作る朝ごはんや、夜に静かに過ごす時間が大好き。
苦手なこと:
- 友達関係の小さなズレ:友達の輪にいると、うまく合わせられないことがある。でも「気にしすぎ」と思われるのが嫌で、悩みを口に出せないことが多い。
家族構成:
- お母さん:クミの一番の理解者。言葉にはしなくても、クミの様子をよく見て、そっと寄り添ってくれる。
- お父さん:仕事が忙しく、平日はあまり顔を合わせられないが、休日はクミと一緒に過ごす時間を大切にしている。
- 妹(3歳):クミがいつも優しく世話をしている。少しやんちゃな妹だが、クミにとっては大事な存在。
学校での様子:
目立つタイプではないけれど明るく元気。毎日友達と楽しく過ごしている。最近、友達との会話がぎこちなくなり、少しだけ孤独を感じている。笑顔を作ってごまかしてしまうため、周りの友達もクミの悩みに気づいていない。
好きなもの:
- ミルクティー:お母さんが夜中に淹れてくれる温かいミルクティーが大好き。
- 星空:夜の静かな星空を見ると、心が落ち着く。
夢:
お母さんのように、誰かをそっと支えてあげられる人になりたいと思っている。でも、まだ自分の気持ちを伝えることが苦手で、そのことに少し悩んでいる。
クミからのメッセージ
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